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更年期障害の基礎知識「広く受け入れられている更年期障害＝不定愁訴説」

更年期障害の考えかたに関し、わが国にはいくつかの説があります。

東北大名誉教授の九嶋先生は更年期にみられる不定愁訴を更年期障害とし、その発症の要因として卵巣機能の衰えよりも、加齢にともなう内分泌環境の変動を考えました。

つまり内分泌環境の変動が自律神経中枢の変調をおこし、その結果、自律神経失調をきたし、不定愁訴がおこると考えました。

更年期障害＝不定愁訴＝自律神経失調症という考えかたです。また、これらの不定愁訴のなかで自律神経調整療法で効果のみられない症状は心因に由来するとして、特に心因性更年期障害としましたが、その頻度は低いとしています。

いっぽう、鹿児島大学の森名誉教授は、更年期障害の発症の要因として加齢にともなう卵巣機能をはじめとする内分泌器官の失調に注目しましたが、これに加えて環境や性格、あるいは心固などのいろいろな要因がからみあっておこるとし、それらの症状のなかで日常生活に支障をきたすものを更年期障害、日常生活に支障をきたさないものを更年期失調としました。つまり、森教授の説は更年期障害の発症について女性ホルモンの欠乏をあげ、さらに環境因子、性格因子の相互関係を重視したわけです。

しかし、九嶋教授の考えも森教授の説も、更年期にみられるすべての症状を更年期障害ととらえ、更年期障害＝不定愁訴という枠組みを抜け出るものではありませんでした。

このような更年期障害のとらえかたは、長いあいだ、わが国の婦人科医ばかりでなく、一般社会においても広く受け入れられてきました。

たとえば４０歳以上の女性が（ときには３０歳代の女性にも）からだの不調を訴えたとすると、まず「更年期障害ではないか」といわれるほどで、更年期障害は女性のからだの不調の代名詞にまでなっています。

（続く）

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