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更年期障害の基礎知識「他の原因との区別が必要な症状が多い」

ここで重要な点は、これらの症状すべてが更年期障害であるとは限らないという点です。

少し話がややこしくなりますが、更年期障害を女性の閉経、すなわちエストロゲンの欠乏が原因となっておこると定義するなら、以上の症状のうち、ほてり、のぼせ、発汗および不眠の一部は、エストロゲンの欠乏が直接関係していることが明らかにされており、まちがいなく更年期障害であり、ホルモン補充療法によって劇的に症状の改善がみられます。

また、頻尿、排尿痛、膣乾燥感、性交痛など泌尿生殖器に関係した症状も、もともとはエス卜ロゲンの欠乏が原因となっていますが、症状があらわれるのは閉経後しばらくしてからのことが多く、更年期から病気が進行しはじめ、更年期が終わるころに発病するという、いわゆる晩発発症という特徴をもつ障害です。

これに対し、背部痛や腰痛は骨粗鬆症（エストロゲン欠乏によって晩発発症する病気）があってもみられますが、骨粗鬆症以外の疾患、たとえば椎間板ヘルニア、脊椎分離症、変形性関節症など整形外科的な病気てもしばしばみられ、エストロゲン欠乏による骨粗鬆症の鑑別が必要となります。

また、いらいらや頭痛、頭重感、不安感、憂うつ、無気力などは、精神的な病気、たとえば神経症やうつ病でもよくみられる症状です。更年期前の女性にこうした症状がみられれば、神経症やうつ病と診断されますが、更年期の女性でほてりや発汗で不眠が長くつづけば、二次的にからだの不調があらわれてきますので、これらの症状は当然おこっても不思議ではありません。

その意味では特徴的な更年期障害といえます。

群馬大学医学部産婦人科を訪れた中高年女性の月経の状況、症状の種類をくわしく調べ、どの症状が更年期に特徴的であるかを検討しました。

その結果、血管運動神経症状以外にも、気分のいらいら、興奮しやすさ、肩こり、背部痛、手足のしびれ、関節痛、うつ気分などの症状が更年期の女性に高い頻度でみられることがわかりました。

また、手足のしびれ、関節痛、不眠は、更年期の女性ばかりでなく、もっと高齢の女性にもよくみられる症状であることが示されています。

これに対し、筋肉痛、下腹部痛、脱力感、無気力、頭重感、孤独感、寝汗、腰の冷え、手足の冷え、動悸、めまい、耳鳴り、胸部圧迫感、悪心、腹部膨満感、食欲不振、立ちくらみは、更年期以前の女性でも同じ割合でみられる症状であり、更年期に特有な 症状は考えられませんでした。

更年期の女性がこれらの症状を訴えても、すぐに更年期障害とは診断せず、他科の病気をくわしく調べてみる必要があります。

（続く）

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